空振りホームラン

昨夜
スタジオ帰り
なぜか吸い込まれるように
フラっと
バッティングセンターへ入った
客は誰ひとりいなく
受付には
野球とは何光年程離れてるんだ
腰折れ婆さんが一人ぽつん
錆びれた感を演出
どれどれと
久しぶりのバットの感触を確かめ200円投入
3球程当ててから
強振
弾道は一直線
ホームランの的に大当たり
無機質なトーンでホームラン賞を告げる声は割れ気味
辺りの静けさも手伝い鳴り響く大仰なセレモニーが長く感じられ
一人苦笑い
ちらりと受付に目を見やると
寝てるのか死んでるのか
ピクリと動かない背中
空しいため息ひとつつき
次の球を打った
ああ〜!
思わず呻き声を漏らし
同じ弾道を描き
一瞬の間


変な間


ホ、ホ〜ムラン!!!
ドン!ドン!パフパフ!!!
うるさい
なんだか悲しい
なんとみじめな気分
いよいよ本格的に恥ずかしくなり赤面
そのまま
バットを置き逃げた
婆さんはやっぱり寝ている
早くこの虚しい夜から帰塁
帰らなくては
何も知らないマシーンが
誰もいないのに
ビュンビュン投げ込む音だけが
こだましてた